墓じまいでお寺と連絡が取れない・廃寺になった場合の改葬許可|行政書士が3つのパターン別に解説

「お寺に電話をかけても誰も出ない」「実家のお墓の管理者が誰なのか、もう誰も知らない」「調べたら、そのお寺はすでに無くなっていた」——墓じまいの相談で、手続きが完全に止まってしまう典型がこのパターンです。
改葬許可の申請には、原則として墓地の管理者が作成した証明書が必要です。ところが、その管理者に連絡がつかない。この時点で「もう墓じまいはできないのでは」と諦めてしまう方が少なくありません。
結論から言えば、連絡が取れなくても改葬許可を取る方法はあります。ただし、状況によって進め方がまったく違います。本記事では、行政書士の実務の視点から、パターン別の手順を整理します。

目次

なぜ「管理者の証明書」が必要なのか

お墓の引っ越し(改葬)は、勝手に行うことができません。墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)第5条により、遺骨を別の場所へ移すには、現在お墓がある市区町村長の許可を受ける必要があります。

そして、その許可を申請するときに添付を求められるのが、同法施行規則第2条に定められた「埋葬・埋蔵の事実を証する書面」です。実務では「埋葬証明書」「納骨証明書」などと呼ばれ、寺院や霊園の管理者に発行してもらうものです。

この書類が求められる理由は単純で、役所は「そのお墓に、本当にその方の遺骨が納められているのか」を自ら確認する手段を持たないからです。だからこそ、現場を管理している人の証明を要求します。

ここが行き詰まりの原因です。
証明書を出せる立場の人がいない、あるいは所在が分からない。そうなると、申請書の形式が整わず、窓口で受理されない——これが「管理者と連絡が取れない墓じまい」で起きていることの正体です。

まず、自分がどのパターンかを見極める

「連絡が取れない」と一言で言っても、法的には次の3つに分かれます。どのパターンかによって、必要な書類も、手続きの主体も、かかる期間もまったく違います。ここを取り違えたまま動くと、何か月も無駄にすることになります。

パターン状況手続きの主体
1. 管理者は存在するが連絡がつかない住職が高齢・入院中、兼務住職で不在がち、霊園の運営会社が代替わりしているなどお墓の使用者(ご相談者)
2. 管理者が事実上不在廃寺になった、寺院が包括宗派から離脱した、集落の共同墓地で管理組織が消滅しているなどお墓の使用者(ご相談者)
3. 無縁墳墓にあたるお墓の使用者・縁故者そのものが不明。誰も承継していない墓地の経営者・管理者側

特に注意していただきたいのが3番です。インターネット上には「無縁墓は官報に公告すれば1年で改葬できる」という説明が数多くありますが、この手続きを行うのは、原則として墓地を経営・管理している側であり、遺族の側ではありません。ご自身が使用者・縁故者として名乗り出られる立場にあるなら、あなたのお墓は「無縁墳墓」ではなく、パターン1か2として進めることになります。

雑草に覆われ、墓石が傾いたまま放置された山あいの古い墓地

管理者との連絡が途絶えたまま年月が過ぎると、墓地はこのように荒れていく。

パターン1・2:管理者の証明が取れない場合の実務

手順1 連絡が取れないことを「記録」に残す

いきなり役所に行く前に、まず連絡を試みた事実を証拠として残すことが重要です。役所は「本当に連絡が取れないのか」を判断する材料を必要とします。

・電話をかけた日付と時間、回数のメモ
・郵送した手紙の控えと、返送された封筒(宛所不明で戻ってきたもの)
・現地に行った際の写真(門が閉ざされている、建物が撤去されている等)
・近隣の方や町内会からの聞き取り内容のメモ

特に、配達証明付きの郵便を送り、「宛所に尋ねあたりません」として返送された封筒は、客観性の高い資料になります。捨てずに、開封せずそのまま保管してください。

手順2 法務局・自治体で墓地の経営主体を調べる

「お寺が無くなった」ように見えても、法人としての宗教法人が存続していたり、包括宗派や近隣寺院に管理が引き継がれていたりすることがあります。次の調べ方が有効です。

・都道府県の宗教法人担当課で、当該宗教法人が現存するかを確認する
・法務局で宗教法人の登記事項証明書を取得し、代表役員の氏名・住所を確認する
・市区町村の生活衛生担当課で、墓地の経営許可名義を確認する
・同じ宗派の近隣寺院に、管理の引き継ぎ先を照会する

この調査で管理者が判明すれば、通常どおり証明書を発行してもらえるケースが実際に多くあります。「連絡が取れない」の大半は、正しい連絡先にたどり着けていないだけというのが実務上の実感です。

手順3 証明書に代わる書面で申請する

調査を尽くしても管理者が判明しない、あるいは判明しても対応が得られない場合は、市区町村に事情を説明し、証明書に代わる書面での申請を相談します。運用は自治体ごとに異なりますが、次のような書類を求められることが一般的です。

書類内容
事情説明書・上申書管理者の証明が得られない経緯を時系列で記載したもの
調査資料返送された郵便、登記事項証明書、聞き取りの記録など
墓地の現況写真お墓の全景、墓碑銘、周辺の状況が分かるもの
申立書・誓約書埋葬の事実に相違ないこと、後日の紛争は申請者が対応することを記載
戸籍謄本等申請者と埋葬されている方との関係を示す資料

※ 自治体によっては独自の様式が用意されています。逆に、代替書面を一切認めない運用の自治体もあり、その場合は別の方法を検討する必要があります。事前相談が欠かせない理由がここにあります。

パターン3:無縁墳墓の改葬(施行規則第3条)

お墓の使用者も縁故者も判明しない場合に用いられるのが、墓埋法施行規則第3条の手続きです。概要は次のとおりです。

1. 墓地使用者名簿、戸籍謄本、戸籍の附票などにより縁故者を調査する
2. 死亡者の本籍・氏名等を官報に掲載し、1年以内に申し出るよう公告する
3. 同じ内容の立札を、墓地の見やすい場所に1年間設置し続ける
4. 1年間、申し出がなかったことを証する書面、官報の写し、立札の写真等を添えて改葬許可を申請する

正式な手続きとして最短でも1年以上かかること、そして官報の掲載料が実費として発生することを、あらかじめ見込んでおく必要があります。掲載料は掲載する行数によって変わるため、対象となる死亡者の人数が多いほど高くなります。

行政上の許可と、民事上の責任は別問題です。
手続きどおりに改葬許可を得たとしても、縁故者の調査が不十分だったと後から判断されれば、親族から損害賠償を請求されるリスクが残ります。実際に、お墓に手入れの形跡があったにもかかわらず調査を尽くさなかったとして、管理者側の責任が認められた裁判例も存在します。形式を整えるだけでなく、調査を尽くした記録を客観的に残しておくことが不可欠です。

役所への事前相談で必ず確認する5点

この類型の墓じまいは、申請書を作る前に、お墓のある市区町村に相談することがすべてです。窓口では次の5点を確認してください。

1. 管理者の証明が得られない場合、どの書類で代替できるか
2. その代替書類に指定様式があるか、自由書式でよいか
3. 現地確認や職員の立会いが必要か
4. 申請から許可証交付までの標準的な期間
5. 申請できるのは誰か(使用者本人/祭祀承継者/代理人の可否)

担当者名を控えておくことも実務上重要です。回答が担当者によって変わることがあり、後から「そんな説明はしていない」となる事態を防げます。

申請書類とペンが用意された市区町村の相談窓口カウンター

申請書を作る前に、お墓のある市区町村の窓口で事前に相談しておくとよいです。

よくいただくご相談

Q. お寺と連絡が取れないのですが、離檀料は払わなくてよいのでしょうか。

A. 離檀料は、そもそも法律上の支払義務があるものではありません。檀家をやめる際の慣習的な謝礼です。連絡が取れない状態であれば支払いようがなく、それを理由に改葬許可が出ないということもありません。ただし後日連絡がついた場合に備え、経緯の記録は残しておくことをおすすめします。

Q. 管理料を何年も滞納しています。手続きはできますか。

A. 滞納があっても改葬許可の申請自体は可能ですが、実務上は管理者が証明書の発行に応じない要因になります。多くの場合、精算をしたうえで進めることになります。金額に納得できない場合は、内訳の説明を求めてください。

Q. 埋葬されている人の名前が分からず、申請書が書けません。

A. 古いお墓では珍しくありません。墓碑銘、過去帳、除籍謄本などから特定していく作業になります。それでも判明しない場合の取り扱いは自治体ごとに異なるため、判明している範囲を整理したうえで事前相談を行うのが確実です。

Q. 費用をかけずに自分で進めることはできますか。

A. ご自身で進めること自体は可能です。ただし墓じまいには最低限の費用が必ず発生します。墓石の撤去工事、新しい納骨先の費用、書類の取得実費などは、どなたが手続きしても避けられません。当事務所へのご依頼の有無にかかわらず、総額50万〜150万円程度が一般的な目安です。ご予算がまったく確保できない状態では、残念ながら手続き自体を進めることができません。

当事務所のサポートと費用

フジ行政書士事務所では、改葬許可申請に必要な書類の作成と提出を代行しています。管理者の所在調査、代替書面の作成、自治体との事前相談まで含めて対応いたします。

全国対応(大阪・箕面の事務所より郵送・オンラインで対応)しており、遠方のお墓についてもご相談いただけます。

内容費用の考え方
通常の墓じまい(管理者の証明が得られる場合)墓じまい代行フルサポートプラン 12万円〜
管理者の所在調査・代替書面での申請調査範囲に応じて別途お見積り
無縁墳墓としての改葬(官報公告を伴うもの)1年間の公告管理を含むため別途お見積り

※ 行政書士が行うのは書類の作成と申請の代行です。お寺との交渉の代理、墓地使用権の帰属といった法的判断は弁護士等の業務範囲となるため、必要に応じて適切な専門家をご案内いたします。

「連絡が取れないまま、何年も止まっている」
そのご状況が、どのパターンに当たるのかだけでもお伝えできます。
まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

大阪府箕面市のフジ行政書士事務所代表。改葬許可申請など、墓じまいに伴う行政手続きや書類作成を支援しています。ご家族や寺院への配慮を大切にし、遠方のお墓にも対応しています。大阪府行政書士会所属(登録番号 第24261915号)。

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