相続放棄してもお墓は放棄できない?祭祀承継者と墓じまい費用の負担|行政書士が解説

親が亡くなり、借金などを理由に相続放棄を考えているとき、「お墓も一緒に放棄できるのか」「墓じまいの費用まで負担しなければならないのか」と悩む方は少なくありません。

結論から言うと、相続放棄をしてもお墓は放棄されません。お墓は預貯金や不動産とは法律上の扱いが違うからです。

この記事の結論

・相続放棄をしても、お墓まで自動的に放棄されるわけではありません
・お墓は「祭祀財産」として、預貯金や不動産などの相続財産とは別に承継されます
・相続放棄をした人が、祭祀承継者としてお墓を引き継ぐこともあります
・墓じまい費用を相続人全員が法定相続分で負担するという法律上の決まりはありません
相続放棄を予定している段階で、亡くなった方の預金から墓じまい費用を払うのは危険です

目次

相続放棄をするとどうなる?

相続放棄とは、亡くなった方の財産も借金も一切引き継がないために、家庭裁判所へ申述する手続きです。

相続放棄が受理されると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぎません。

相続放棄は、原則として自分のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(民法915条)。

ただし、この相続放棄で手放せるのは「相続財産」です。お墓の承継は、これとは別の問題として考える必要があります。

相続放棄してもお墓は放棄されない

相続放棄をしても、お墓が自動的に手放せるわけではありません。

民法897条は、系譜・祭具・墳墓(お墓)について、通常の相続とは異なるルールを定めています。お墓や仏壇などは「祭祀財産」と呼ばれ、相続財産とは切り離して承継されます。

項目相続財産祭祀財産(お墓)
具体例預貯金、不動産、有価証券、借金お墓、仏壇、位牌、家系図
引き継ぐ人相続人祭祀承継者
相続放棄の効果引き継がなくなる影響しない
遺産分割の対象なるならない

誤解されやすいポイント
「相続放棄をした=お墓とも一切関係がなくなる」という理解は正しくありません。相続放棄と祭祀財産の承継は、別々の制度です。

たとえば、父親に多額の借金があり長男が相続放棄をした場合でも、父親が長男を祭祀承継者に指定していたときは、長男がお墓を引き継ぐことになります。

相続放棄とお墓の承継は別の制度であることを示すイメージ

相続財産とお墓は別のルールで引き継がれます

お墓を引き継ぐ「祭祀承継者」はどう決まる?

お墓などの祭祀財産を引き継ぐ人を祭祀承継者といいます。民法897条では、次の順序で決まります。

亡くなった方が祭祀を主宰する人を指定していれば、その指定に従う

指定がなければ、その地域や家の慣習に従う

慣習も明らかでなければ、家庭裁判所が定める

つまり、「長男だから必ずお墓を継ぐ」「相続人だから全員でお墓を共有する」という仕組みではありません。相続人と祭祀承継者は同じ人になることが多いものの、法律上は別の問題です。

誰がお墓の手続きを進める立場になるのかは、墓じまいの責任者は誰か(祭祀承継者・墓地名義人・親族の役割)で詳しく解説しています。

相続放棄した人が墓じまいすることはできる?

相続放棄をした人でも、祭祀承継者であれば墓じまいを進めることができます。相続財産を承継することと、祭祀財産を承継することは別だからです。

ただし、実際に墓じまいを進めるには、祭祀承継者だけでなく現在の墓地使用者(名義人)も確認する必要があります。父親が亡くなった後も墓地の名義が父親のままの場合、霊園や寺院から先に名義の承継手続きを求められることがあります。

誰が墓地の使用権を承継できるかは、墓地・霊園ごとの使用規則によっても異なります。

墓じまいの前に確認すること

・誰が祭祀承継者なのか
・現在の墓地使用者(名義人)は誰なのか
・墓地管理者がどのような承継手続きを求めているのか

墓じまい費用は誰が払う?

墓じまい費用を、相続人全員が法定相続分に応じて負担しなければならないという法律上のルールはありません。

「父の相続人が3人だから、費用も3分の1ずつ」と考える必要はなく、実際には祭祀承継者や墓地使用者が中心となって墓じまいを進め、その費用を負担するケースが多く見られます。

一方で、兄弟姉妹で話し合い、次のような分担にすることもあります。

分担の形内容
均等負担兄弟姉妹全員で同じ額を出し合う
承継者が多めに負担お墓を引き継ぐ人が中心に負担し、他は一部を出す
費用と手続きを分担遠方の兄弟が費用を出し、近くの兄弟が手続きを担当する

墓じまい費用の総額は50万〜150万円程度が目安です。内訳は墓じまいの費用相場と誰が払うのかで解説しています。

相続放棄を考えているなら「遺産から墓じまい費用を払う」のは危険

相続放棄を予定しているなら、亡くなった方の預金から墓じまい費用を支払ってはいけません。

民法921条では、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなす(法定単純承認)と定めています。

そのため、相続放棄をするつもりであっても、亡くなった方の銀行口座からお金を引き出して墓じまい費用を支払うと、相続を承認したと評価され、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

注意
相続放棄を検討している段階では、亡くなった方の預金を墓じまい費用や墓地管理料に使うことを自己判断で進めないでください。

一方、自分自身のお金で墓地管理料や墓じまい費用を支払うことは、相続財産の処分にはあたりません。

ただし、相続放棄への影響は具体的な行為や事情によって判断が分かれることがあります。「相続放棄も考えているが、お墓の管理費の請求が来ている」「石材店から墓じまい費用の支払いを求められている」という場合は、遺産に手を付ける前に状況を整理しておく必要があります。

こうした状況に心当たりがある方へ

お墓側の手続き(墓地名義の確認、祭祀承継関係の整理、改葬許可申請)は、相続放棄の判断と切り離して先に整理できます。相続放棄の期限が迫っている場合も、お墓の相談だけ先に進めることが可能です。

LINEで相談する(初回相談1時間無料)
相続放棄と墓じまいを同時に考える家族のイメージ

相続放棄の期限内に、お墓の名義と承継者も整理しておきましょう

相続放棄をして、お墓も継ぎたくない場合はどうする?

相続放棄だけでは、お墓の問題は解決しません。「借金は相続放棄したい。お墓も遠方で維持できない」という場合は、相続放棄とは別に、お墓を今後どうするかを決める必要があります。

選択肢の一つが墓じまいです。現在のお墓から遺骨を取り出し、次のような場所へ移します。

・永代供養墓
・納骨堂
・樹木葬
・別の家族のお墓

遺骨を別の墓地や納骨堂へ移す「改葬」には、現在遺骨がある場所の市区町村長による改葬許可が必要です(墓地、埋葬等に関する法律5条)。

「お墓を維持する人がいない」という理由だけで墓石を撤去するのではなく、先に遺骨の行き先と改葬手続きを確認しておく必要があります。

相続放棄と墓じまいが重なったときの進め方

相続放棄と墓じまいを同時に考える場合は、次の順序で整理すると分かりやすくなります。

① 相続財産と借金を確認する
預貯金・不動産・有価証券などのプラス財産と、借入金・未払金などのマイナス財産を確認します。相続放棄には原則3か月の期限があるため、お墓だけを先に考えて相続の判断を後回しにしないことが重要です。
② 墓地の名義人を確認する
寺院や霊園に問い合わせ、現在の墓地使用者が誰になっているのかを確認します。
③ 祭祀承継者を確認する
亡くなった方の指定、これまでのお墓の管理状況、親族間の事情などを確認します。
④ お墓を残すか墓じまいするか決める
管理を続けることが難しければ、永代供養や樹木葬などへの改葬を検討します。
⑤ 墓じまいをするなら改葬許可の手続きを進める
新しい納骨先を決め、必要な証明書を揃えて、現在遺骨がある市区町村へ改葬許可申請を行います。

墓じまいに親族全員の同意は必要?

相続放棄をした人がいる場合でも、「相続人全員の同意がなければ墓じまいできない」と法律で決まっているわけではありません。

ただし、祭祀承継者・墓地使用者・実際にお墓参りをしている親族が異なる場合は、後からトラブルになることがあります。

墓石の撤去を急がない方がよいケース

・兄弟の一人だけが墓じまいを進めている
・墓地の名義が亡くなった親のまま
・祭祀承継者が誰か決まっていない
・親族の一部が墓じまいに反対している

反対された場合の進め方は、墓じまいに親族全員の同意は必要か(反対された場合の進め方)で解説しています。

行政書士に相談すると整理しやすいケース

相続放棄そのものと墓じまいは別の手続きですが、実際には一つの相続をきっかけに同時に問題になります。次のような場合は、まず現在の状況を整理することから始めると進めやすくなります。

・親が亡くなり、相続放棄と墓じまいを両方考えている
・お墓の名義が亡くなった親や祖父母のままになっている
・誰が祭祀承継者なのか分からない
・お墓に誰の遺骨が入っているのか整理できていない
・祭祀承継関係を確認するために戸籍を集めたい
・改葬許可申請だけ依頼したい
・遠方のお墓なので寺院・霊園とのやり取りが難しい
・墓じまいのどの部分を自分で行い、どこを依頼するか決めたい

フジ行政書士事務所では、最初から墓じまいのすべてを依頼していただく必要はありません。戸籍の収集、墓地名義の確認、必要書類の整理、改葬許可申請など、必要な部分だけ(個別書類作成 20,000円〜)のご相談にも対応しています。

相続放棄の申述そのものについては、状況に応じて適した相談先をお伝えしたうえで、お墓側の手続きを並行して整理できます。大阪・箕面の事務所から郵送・オンラインで全国対応しています。

料金の詳細は墓じまいサポートのご利用料金をご覧ください。

相続放棄とお墓についてのFAQ

Q1.相続放棄をすればお墓も放棄できますか?

いいえ。相続放棄をしても、お墓は放棄されません。

お墓は祭祀財産であり、相続財産とは別のルールで祭祀承継者へ承継されます(民法897条)。

Q2.相続放棄した人がお墓を継ぐことはありますか?

はい。あります。

相続放棄と祭祀財産の承継は別の制度のため、相続放棄をした人が祭祀承継者に指定されていれば、その人がお墓を引き継ぎます。

Q3.相続放棄をしたら墓じまい費用は払わなくていいですか?

相続放棄をしただけで、墓じまい費用の問題が自動的に解決するわけではありません。

誰が祭祀承継者・墓地使用者なのか、誰が墓じまいを依頼するのか、親族間でどう分担するのかによって変わります。

Q4.亡くなった親の預金から墓じまい費用を払ってもいいですか?

相続放棄を考えているなら、払ってはいけません。

相続財産の処分にあたり、法定単純承認と評価されて相続放棄ができなくなるおそれがあります(民法921条)。自分自身のお金で支払う分には問題ありません。

Q5.兄弟全員が相続放棄したらお墓は誰が継ぐのですか?

相続放棄をした人の有無では決まりません。

亡くなった方の指定、慣習の順に祭祀承継者を判断し、それでも決まらなければ家庭裁判所が定めます。

Q6.お墓を引き継ぎたくない場合はどうすればよいですか?

墓じまいをして、永代供養墓や納骨堂などへ改葬する方法があります。

ただし、墓地名義・祭祀承継者・遺骨の行き先を確認し、改葬許可を取ってから進める必要があります。

Q7.相続放棄の期限が迫っていますが、お墓の相談は後回しでいいですか?

相続放棄の判断は期限内に優先してください。

お墓の手続きは相続放棄の後でも進められます。ただし、期限内に亡くなった方の預金からお墓関係の支払いをしないよう注意が必要です。

まとめ|相続放棄とお墓は分けて考える

相続放棄をしても、お墓まで自動的に放棄されるわけではありません。預貯金や不動産、借金などの「相続財産」と、お墓などの「祭祀財産」は別のルールで扱われます。

分けて整理する4つのこと

・相続財産をどうするか(相続放棄の判断)
・誰が祭祀承継者になるのか
・墓地の名義は誰なのか
・お墓を維持するのか墓じまいするのか

特に相続放棄を予定している場合は、墓じまい費用を亡くなった方の預金から支払う前に、必ず立ち止まって確認してください。

相続後のお墓について、何から確認すればよいか分からない方へ

墓地の名義確認、戸籍収集、祭祀承継関係の整理、改葬許可申請など、必要な部分からご相談いただけます。初回相談1時間無料。全国対応(大阪・箕面の事務所より郵送・オンラインで対応)。

とりあえずLINEで相談する フジ行政書士事務所 墓じまいサイト

※本記事は2026年9月時点の法令・公的情報をもとに一般的な制度を解説したものです。相続放棄への影響は、個別の財産処分や事実関係によって判断が異なる場合があります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

大阪府箕面市のフジ行政書士事務所代表。改葬許可申請など、墓じまいに伴う行政手続きや書類作成を支援しています。ご家族や寺院への配慮を大切にし、遠方のお墓にも対応しています。大阪府行政書士会所属(登録番号 第24261915号)。

目次