墓じまいは都市部と地方でどう違う?――それぞれの背景とリアルな事情

都市と地方、それぞれの「やむを得なさ」

墓じまいを考える人が増えている今、その理由は地域によってまったく異なります。都市部では、現代の生活に合わせた“選ぶ墓じまい”が進み、地方では、守りたくても続けられない“やむを得ない墓じまい”が静かに広がっています。どちらも背景には、家族の形、働き方、地域社会の変化といった、現代日本が抱える構造的な課題があります。

東京・大阪・名古屋などの都市圏では、共働きや単身世帯が増え、生活の中心が自宅や職場、子どもの学校など「今の生活圏」に集中しています。その一方で、お墓は郊外や遠方にあり、通う時間も気力も限られてしまう。「行けない」「掃除できない」「費用だけがかかる」という現実が、やがて整理を決断するきっかけになります。

一方で、地方の小さな集落では、世代交代そのものが難しくなっています。子どもは進学や就職で都市部へ移り住み、地域には高齢者だけが残る。年に一度のお盆でさえ帰省が難しい家庭も増え、「墓を継ぐ人がいない」という状況が深刻化しています。つまり、都市では“生活の現実”が、地方では“継承の限界”が、墓じまいを後押ししているのです。

都市部の墓じまい――合理性と距離の問題

都市部で墓じまいを決断する多くの人が口を揃えて言うのは、「気持ちはあっても時間がない」「管理が負担になった」という声です。仕事、育児、介護など、時間に追われる生活の中で、数時間かけて墓参りに行くことが難しくなりました。お墓を守ることが“義務”になり、かえって心の重荷になってしまう――そんな現実が、墓じまいを検討するきっかけになります。

都市部では、墓地の地価や管理料も高騰しています。霊園や寺院墓地の年間管理費、遠方への交通費など、維持にかかる費用は決して軽くありません。そうした中で、「アクセスが良く、管理を任せられる永代供養墓や納骨堂にまとめよう」という選択が広がっています。駅近や屋内型の施設が人気を集め、カードキーや電子香炉など新しい仕組みが整った現代的な供養の場も増えました。

さらに、都市部では「生前墓じまい」という考え方も定着しつつあります。自分が元気なうちにお墓を整理し、永代供養や樹木葬に移すことで、将来の不安を減らす。行政書士や終活アドバイザーに相談しながら進める人も多く、「迷惑をかけないための準備」として前向きに捉えられるようになりました。墓じまいが“重い決断”ではなく、“新しい暮らし方の一部”として受け入れられつつあるのが、都市部の今の姿です。

地方の墓じまい――続けたくても続けられない現実

地方の墓じまいは、都市部とは異なる深刻さがあります。郷土の寺院や共同墓地には、先祖代々の記憶と地域の絆が息づいています。お墓を守ることは、家の誇りを守ることでもあり、「自分の代で終わらせたくない」という気持ちが強くあります。しかし現実には、維持できる人がいない。親が亡くなれば、残された子どもは遠方に住み、手入れもままならない。雑草が伸び、墓石が傾いていく姿を見るたびに、心苦しさを感じる人が少なくありません。

また、地方では「地域の目」も影響します。「他の家はまだ続けているのに、うちだけやめていいのか」「ご先祖に申し訳ない」そうした感情の壁が、決断を遅らせる要因になります。中には、親族会議を開いて全員の同意を得るまでに数年かかったという例もあります。お墓が“家”そのものである地域ほど、話し合いに慎重さが求められるのです。

それでも、地方でも少しずつ意識の変化が見られます。住職の高齢化や寺院の無住化が進む中、永代供養墓や共同墓を新設する寺も増えています。「墓じまい=供養をやめること」ではなく、「形を変えて続けること」として受け入れられるようになってきたのです。行政や石材店、行政書士が協力して改葬許可の手続きを支援する事例も増えており、地域ぐるみで“次の供養”へ移行する流れが始まっています。

都市と地方、それぞれの選択と共通する想い

都市部と地方では、進め方も考え方も異なります。都市では「合理性」「利便性」「生前整理」といった現実的な視点から動き、地方では「継承の限界」「地域の変化」「家族の責任」が主な動機になります。けれども、その根底にある想いは同じです。どちらの地域でも、人々が墓じまいを考えるのは、「家族に負担をかけたくない」「ご先祖様を大切にしたい」という心からなのです。

都市部では供養の“形”が変わり、地方では供養の“場所”が変わっていく。形式は異なっても、そこに流れる気持ちは同じ。「墓を閉じる」という言葉には、どこか寂しさが伴いますが、実際には「思いを残すための整理」であり、「感謝を新しい形に変える」行為でもあります。

これからの墓じまい――「終わり」ではなく「次への橋渡し」

これからの時代、墓じまいはますます身近なものになっていくでしょう。少子高齢化が進み、家族のかたちが多様化する中で、お墓の維持もひとつの「ライフプラン」として考える必要があります。墓じまいとは、過去を閉じることではなく、未来へ橋をかける行為です。永代供養や樹木葬、散骨といった多様な選択肢が広がる中、自分たちに合った供養のかたちを選べる時代になりました。

大切なのは、形ではなく「気持ちを残すこと」。どんな場所で、どんな方法であっても、故人を思う心があれば供養は続いていきます。墓じまいは“終わり”ではなく、“つなぐための整理”。都市でも地方でも、ご先祖を大切に思う気持ちがあれば、その行為は決して冷たいものではありません。それぞれの事情の中で、自分たちにふさわしい方法を選ぶ――それこそが、これからの日本における新しい供養のかたちなのです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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