開眼供養と閉眼供養――お墓を建てるとき・閉じるときに知っておきたい儀式の意味

開眼供養とは何か

お墓を建てたときや仏壇・位牌を新しく用意したときに行う「開眼供養(かいげんくよう)」は、単なる儀式ではなく「魂を入れる」ための大切な行いです。一般に「魂入れ」「入魂式」と呼ばれることもあり、物質としての石や木が、供養の対象としての“祈りの場”になる瞬間でもあります。

「開眼」とは、仏教において仏像や仏具に仏の目を開く、すなわち“命を吹き込む”という意味があります。お墓の場合も同様で、建立された石碑に魂を宿すことで、初めてその場所が「故人や先祖の霊を供養する場所」として意味を持つのです。この儀式を経ずに納骨を行うことは少なく、ほとんどの場合は開眼供養を経て正式にお墓が完成します。

開眼供養の流れ

開眼供養は、仏教の宗派や地域によって多少の違いはありますが、一般的には次のような流れで行われます。

① 日程の決定:お墓が完成したら、まず僧侶や寺院に相談して日取りを決めます。多くの場合、納骨と同日に行う「開眼納骨法要」となります。

② 準備と持ち物:花・線香・供物(果物やお菓子など)を用意します。お布施は3〜5万円ほどが目安で、のし袋には「御布施」「開眼供養料」と記載します。

③ 当日の儀式:僧侶が読経を行い、参列者が焼香します。僧侶が墓石や仏具を清め、「開眼」の言葉を唱えることで、魂が宿るとされます。

④ 納骨と会食:遺骨を納め、焼香を行ったのち、家族で会食をして故人を偲びます。開眼供養は、喜びと感謝が交差する特別な時間です。

閉眼供養とは何か

一方の「閉眼供養(へいがんくよう)」は、開眼の逆にあたる儀式で「魂を抜く」ために行われます。長年守ってきたお墓を撤去する、あるいは改葬して別の場所へ移すときに行うもので、「魂抜き」「抜魂供養」とも呼ばれます。

墓じまいの手続きでは、行政書類や石材店との調整に意識が向きがちですが、宗教的にはこの閉眼供養が欠かせません。お墓は長い年月、家族が祈りをささげてきた場です。そこに宿る魂へ「ここでの役目を終えました」と感謝を伝え、次の供養先へと送り出す――それが閉眼供養の本来の目的です。

閉眼供養を行わずに墓石を撤去すると、形の上では終わっても心の整理がつかないという声も多く聞かれます。宗教的な意味だけでなく、人としての礼儀としても大切な儀式といえるでしょう。

閉眼供養の流れ

閉眼供養の実際の手順は、以下のようになります。

① 寺院・霊園への連絡:現在の墓地を管理する寺院または霊園に墓じまいの意向を伝え、閉眼供養の日程を相談します。

② 僧侶の手配と費用準備:閉眼供養は僧侶の読経を中心に行われます。お布施は2〜5万円程度が一般的です。檀家でない場合は出張供養を依頼することもできます。

③ 当日の儀式:墓前に花・線香・供物を供え、僧侶が読経を行います。「魂を抜く」ための経文が唱えられ、これにより墓石や仏具から魂が離れたとされます。

④ 遺骨の取り出しと改葬準備:閉眼供養を終えた後、石材店が立ち会い、墓石を動かして遺骨を取り出します。行政書士などが改葬許可書を整え、新しい納骨先へ移す準備をします。

⑤ 墓石撤去と完了報告:石材店が墓石を撤去し、更地に戻して完了報告を行います。閉眼供養は、手続きの中でも最も心の節目となる時間です。

開眼供養と閉眼供養の違い

項目開眼供養閉眼供養
意味お墓や仏像などに魂を入れる儀式魂を抜いて役目を終える儀式
別名魂入れ、入魂式魂抜き、抜魂供養
目的新しい供養の対象に命を宿すため墓じまいや改葬にあたって魂を移すため
行う時期お墓の建立時や納骨時墓じまい・改葬・石碑撤去の前
儀式の内容僧侶の読経・焼香・清めの儀式僧侶の読経・焼香・魂抜きの儀式
所要時間約30分〜1時間約20〜30分
費用の目安3〜5万円程度(お布施)2〜5万円程度(お布施)
準備物花・線香・供物・お布施・数珠花・線香・供物・お布施・改葬書類など
儀式後の流れ納骨・法要・お墓の完成遺骨の取り出し・改葬・墓石撤去
心の意味祈りの場の始まり感謝と区切りの儀式

お墓を継ぐ・閉じる時の心構え

開眼供養は「始まり」、閉眼供養は「終わり」。しかし、どちらも命をつなぐ通過点に過ぎません。お墓を守る、あるいは閉じるという選択は、どちらも家族の想いがあっての決断です。重要なのは、「どう残すか」や「どう手放すか」ではなく、「どう感謝を伝えるか」「どう受け継ぐか」という姿勢です。

近年では、永代供養墓や樹木葬など、供養の形が多様化しています。閉眼供養を経て、新しい供養の形へと移行するという考え方も広がっています。形式にとらわれず、しかし礼を尽くす――その姿勢が現代の供養に求められる心構えです。

また、閉眼供養や改葬の手続きでは、寺院や霊園との調整、行政への申請、石材店との契約など、複数の段取りを要します。こうした実務的な部分は行政書士がサポートできますが、心の部分までは書類で処理できません。儀式の意味を理解し、家族で気持ちを共有することこそが供養の本質です。

心を込めて終えるにあたって

開眼供養も閉眼供養も、「形を整えるための儀式」ではなく、「心を整えるための節目」です。開眼供養によってお墓に魂が宿り、閉眼供養によってその魂が新たな場所へと旅立ちます。その過程で大切なのは、故人への想いを形にし、感謝をもって送り出すことです。

どちらの儀式においても、焦らず、丁寧に、家族で歩調を合わせて進めることが大切です。手続きや費用を整えながらも、心の区切りを大切にする――その両立こそが、これからの供養のあり方といえるでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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