「夫(日本人)が亡くなり、お墓を守ってきたが、私も高齢になったので母国へ帰りたい」
「両親は日本でお墓を建てたが、私たち子供世代は海外に拠点がある。日本のお墓をどうすればいいか」
いま、こうした相談が行政書士事務所に急増しています。
日本独自の「檀家制度」や「墓地管理」の仕組みは、日本人でさえ複雑に感じるものです。ましてや、日本語が母語でない方や、海外の慣習を持つ方にとって、そのハードルは想像を絶します。
今回は、日本に在留する外国人、およびそのご家族が直面する「墓じまい(改葬)」のリアルと、遺骨を国境を越えて移動させるための「法的・行政手続き」について、4つの視点から徹底解説します。
1. なぜ今、外国人の「墓じまい」が増えているのか?永住者・国際結婚カップルが抱えるリスク
かつて、多くの永住外国人や国際結婚カップルが、日本に骨を埋める覚悟で立派なお墓を建てました。しかし、時代は変わり、想定していなかった「継承者問題」が発生しています。
「お墓を継ぐ人」が日本にいない
最も多いのが、子供世代の海外流出です。
「子供はアメリカ国籍を取得して働いている」「自分もリタイア後は母国の家族の元へ戻るつもりだ」というケースです。
日本の一般的なお墓(一般墓)は、管理費を支払い、定期的に掃除やお参りをする親族がいることを前提としています。管理者が不在になれば、そのお墓は「無縁仏」として撤去処分されてしまいます。
愛する家族の遺骨が無縁仏として処理されるのを防ぐため、元気なうちに自らの手で幕を引く「墓じまい」を決断する方が増えています。
宗教観と「檀家制度」のミスマッチ
日本の寺院墓地の多くは「檀家(だんか)」になることが条件です。しかし、外国人配偶者やその子供にとって、寺院への寄付、法要への参加、そして「離檀(りだん)」時の高額な費用請求トラブルなどは、理解しがたい商習慣です。
「キリスト教徒だが、夫の家の宗派に従ってきた。でも夫が亡くなった今、自分はこのお寺との関係を清算したい」という切実な声も少なくありません。
円安と維持コストの増大
墓地の年間管理料やお布施は、決して安くありません。
特に近年は円安の影響で、海外にルーツを持つ方にとって、日本の資産(お墓を含む)を維持するメリットが薄れています。「維持費を払い続けるより、一度リセットして、遺骨をコンパクトにして手元に置く(手元供養)か、母国の墓に入れたい」という経済的な合理性も背景にあります。
2. 日本のお墓を片付ける手続き。「改葬許可証」と寺院交渉の壁
「墓じまい」は、単に墓石を撤去すれば終わりではありません。法律上は「改葬(かいそう)」と呼ばれ、役所の許可がないと遺骨を勝手に動かすことはできません。このプロセスは外国人にとって非常に難解です。
必須書類「改葬許可申請書」の罠
遺骨を取り出すには、墓地がある自治体(市役所など)から「改葬許可証」の発行を受ける必要があります。
これには以下の情報が必要です。
- 現在の墓地管理者の署名・捺印: お寺の住職などに書いてもらう必要があります。
- 新しい「受け入れ先」の証明: ここが最大の難関です。
- 日本国内の別の墓地に移すなら、その契約書があればOKです。
- しかし、「海外へ持ち出す」場合、日本の役所は「海外の墓地の受入証明書」を求めることがありますが、国によってシステムが異なるため、書類が揃わず窓口で立ち往生するケースが多発しています。
寺院との「離檀交渉」
お寺にとって、檀家が減ることは収入減を意味します。
外国人の方が一人でお寺に行き「墓じまいをしたい」と伝えると、「突然そんなことを言われても困る」「離檀料として〇〇万円納めてください」といったトラブルに発展することがあります。
言葉の壁や文化的な文脈の違い(「長年の付き合い」を重んじる寺院文化)から、感情的な対立が生まれやすいため、行政書士などの第三者が間に入って法的な権利(信教の自由や契約解除の自由)に基づいて冷静に交渉・調整を行う必要があります。
物理的な撤去工事
石材店の手配も必要です。指定石材店制度がある墓地もあれば、自分で探さなければならない場合もあります。見積もりの内容(基礎の撤去まで含むか、更地戻しか)を日本語で正確に理解し契約する能力が求められます。
3. 遺骨を持って飛行機に乗れるか?「遺骨の海外搬送」に必要な書類と検疫
墓じまいを終え、取り出した遺骨を母国へ持ち帰る場合、さらにハードルが上がります。遺骨は単なる「荷物」ではありません。航空会社の規定や、相手国の輸入規制をクリアする必要があります。
遺骨の「粉骨(パウダー化)」処理
多くの国や航空会社では、遺骨をそのままの形(骨壺)で持ち込むよりも、パウダー状に粉砕(粉骨)することを推奨、あるいは義務付けています。
また、物理的なスペースの問題や、見た目の心理的な配慮からも、専門業者に依頼して真空パック化し、容量を1/4〜1/5程度に圧縮して持ち出すのが一般的です。
絶対に必要な「証明書類」セット
空港の手荷物検査や、相手国の税関(検疫)を通過するために、以下の書類(英語または母国語への翻訳付き)を準備する必要があります。これを怠ると、最悪の場合、空港で没収されたり、入国を拒否されたりします。
- 改葬許可証(原本と英訳): 日本の役所が発行した正規の許可証。
- 火葬証明書・埋葬証明書(原本と英訳): 誰の遺骨であるかを証明するもの。
- 遺骨証明書(Certificate of Remains): 大使館や領事館で発行してもらう、あるいは行政書士が作成し公証役場で認証を受けた書類。「中身が麻薬や危険物ではなく、人骨である」ことを証明します。
- 非感染症証明書: 死亡原因が感染症ではないことを証明する書類が必要な国もあります。
航空会社への事前申告
遺骨は原則として「機内持ち込み手荷物」にします(預け入れは破損のリスクがあるため)。
X線検査で不審物として止められないよう、上記の書類をすぐに提示できるようにし、事前に航空会社へ「遺骨を持ち込む」旨を伝えておく必要があります。この調整業務も、言葉の壁がある外国人にとっては大きなストレスとなります。
4. 「墓を持たない」という選択肢。外国人に選ばれている永代供養と樹木葬
これから日本でお墓をどうするか考えている、あるいは墓じまい後の遺骨を全ては持ち帰らず、一部を日本に残したい(分骨)という外国人の方には、従来の「石のお墓」以外の選択肢が主流になりつつあります。
- 永代供養墓(えいたいくようば): お寺や霊園が、家族に代わって永続的に管理・供養してくれるお墓です。メリットは管理費が不要で、子供に負担を残さない点です。
- 樹木葬(じゅもくそう): 墓石の代わりに木や花をシンボルにする埋葬方法です。「自然に還る」コンセプトは宗教観を超えて受け入れられやすいスタイルです。
- 送骨(そうこつ)・海洋散骨: 日本の海に散骨する選択肢も、「国境のない海に還る」という意味で国際的な背景を持つ方々に選ばれています。
国境を越える「供養」を法的にサポートします
「墓じまい」は、単なる片付けではありません。
故人の尊厳を守り、残された家族が新しい人生のステージに進むための、前向きな「法的・行政手続き」です。
特に外国籍の方の場合、日本の法律(墓埋法)と、母国の法律、そして航空法や検疫といった複数のハードルを同時にクリアしなければなりません。これらを個人の力だけで行うのは非常に困難であり、書類の不備一つで計画が頓挫するリスクがあります。
当事務所では、「墓地管理者との交渉」から「改葬許可申請」、「外務省認証(アポスティーユ)」、「翻訳手配」まで、ワンストップでサポート可能です。
日本での役目を終え、母国へ帰る決意をされた方。日本に残るが、お墓の負担は手放したい方。
複雑な手続きはプロに任せて、どうぞ安心してご家族との時間を大切になさってください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「こんなこと相談していいの?」
—— 大丈夫です! あなたの想いに丁寧に寄り添います
フジ行政書士事務所では、「墓じまいをしたいけれど、何から始めればいいかわからない」「手続きや費用の目安を知りたい」「遠方のお墓を整理したい」といったご相談を多くいただいています。
お墓のことは、誰に相談してよいのか迷う方も少なくありません。
そんなときこそ、どうぞお気軽にご連絡ください。
お墓の現状やご家族のご希望に合わせて、最も良い形を一緒に考えてまいります。
お電話でのお問い合わせは 072-734-7362 までお気軽にどうぞ。
墓じまいの流れや費用のこと、書類の準備など、どんな小さなご質問にも丁寧にお答えいたします。
