現在の墓地管理者への相談
まずは今ある墓地(寺院・公営・民営)に「墓じまいをしたい」と伝えます。ここでは、墓じまいが可能かどうか、具体的な手続きの流れ、埋葬証明書など必要となる書類の取り扱い、閉眼供養を行うかどうか、さらに管理料の精算や寺院墓地であれば離檀料の考え方など、押さえておくべき点を一つずつ確認することが大切です。
特に寺院墓地の場合、離檀料の相談が重要になります。境内墓地では、お寺との関係性を丁寧に保つことが後々のトラブル回避にもつながります。
さらに、墓じまいの相談が複雑化しやすい理由のひとつに、書類と宗教儀式、石材店への依頼という三つの領域が絡む点があります。誰が何を準備し、どの順番で進めるのかが曖昧なまま動くと、役所での申請が通らなかったり、寺院との関係が悪化したりすることがあります。
行政書士は、このような場面で実務的な助言が可能です。改葬許可申請の書類作成や必要書類の確認、墓地管理者とのやり取りにおける注意点、家族間の意思調整など、法的手続きをスムーズに進めるためのサポートを行えるため、手続きに不安を感じる人にとって大きな助けとなります。
新しい納骨先を決める(受入証明書を取得)
永代供養墓や納骨堂、樹木葬、新しい墓地などさまざまな選択肢の中から改葬先を決め、その施設から「受入証明書」(新しい納骨先の使用許可証)を発行してもらいます。受入証明書は改葬許可申請に必ず必要となるため、早い段階で確保しておくことが重要です。
この段階では「信頼できる業者を選ぶこと」も欠かせません。墓じまいでは石材店の役割が非常に大きく、どの業者を選ぶかによって費用面だけでなく満足度も大きく左右されます。自治体の関連登録制度に登録されているかどうか、見積もりの内訳が明確であるか、説明が丁寧で過度な値下げを行わないこと、施工事例を提示できること、そして必ず現地確認を行うことなど、信頼できる業者かどうかを判断する材料は少なくありません。
特に「現地を見ずに見積もりを出す業者」には注意が必要です。墓石の大きさや基礎コンクリートの状況、敷地の構造などによって費用は大きく変わるため、現地確認なしの見積もりは信頼性が低いと言わざるを得ません。
市区町村役場での改葬許可申請
現在のお墓がある市区町村役場に提出する改葬許可申請は、単なる書類提出に見えて実は「遺骨が確実に適法な施設へ移動すること」を公的に確認する重要な審査プロセスでもあります。書類の整合性が取れていない場合は受理されず、申請者が複数回役所へ出向かなければならないケースもあります。
例えば、埋葬証明書と受入証明書の氏名の表記が微妙に違っていたり、続柄や埋葬場所、新しい納骨先の所在地の記載に不一致があると、役所が遺骨の同一性を確認できず手続きが止まってしまいます。古いお墓の場合は戒名しか記載がない、埋葬日が不明、過去帳と墓石の情報が一致しないなど、追加確認が必要になることも少なくありません。
自治体によっては郵送申請を受け付けるところもあれば、必ず対面での本人確認を必要とする地域もあります。そのため、自治体のホームページや電話で必要書類を事前に確認しておくと手続きがスムーズに進みます。
改葬許可申請に必要なのは、改葬許可申請書に加えて、現在の墓地管理者が発行する埋葬証明書と新しい納骨先が発行する受入証明書です。これらの書類に問題がなければ役所から改葬許可証が発行されます。この改葬許可証は納骨の際に必ず求められる重要書類であり、紛失すると再取得が手間になるため大切に保管しておく必要があります。
閉眼供養(魂抜き)
閉眼供養は法律で義務付けられたものではありませんが、寺院墓地ではほぼ必ず行われる儀式です。宗教上、墓石を動かす前には「魂を抜く」ための儀式が必要と考えられており、多くの場合、僧侶を呼んでお経をあげてもらいます。公営や民営の墓地でも希望があれば実施できます。
この儀式は単に形式的なものではなく、先祖への礼節を示し、家族が気持ちの区切りをつけるための重要な意味を持ちます。特に代々続いてきたお墓の場合、閉眼供養を行わないまま撤去工事に入ると「けじめがない」と感じる親族が出ることもあり、家族間の感情面にも配慮が必要です。
また、閉眼供養は石材店の作業スケジュールとも密接に関わるため、僧侶の予定と工事日程の調整が欠かせません。春彼岸・秋彼岸・お盆前などの繁忙期は予約が混み合うことが多く、早めに準備するのが安心です。
墓じまいの場面では、費用の安さだけで石材店を選ぶのは避けるべきという点にも注意が必要です。安すぎる見積もりには後から追加費用が発生したり、作業が雑で墓地管理者からやり直しを求められたりするリスクが潜んでいます。工事当日に高額な追加費用を請求されるケースや、更地の仕上がりが基準に満たないケース、遺骨の扱いに問題が生じるケース、近隣とトラブルになるケースなども実際に報告されています。
こうしたリスクを避けるためには、説明が明確で責任の所在をはっきり示す業者を選ぶことが重要です。墓じまいは「安さ」よりも「確実さ」を優先することで、結果的に家族の安心につながります。
石材店による撤去工事
墓石の撤去工事は、石材店が墓石の解体や基礎部分の撤去、区画全体の更地化、そして遺骨の取り出しなどを行う工程です。費用の目安は10万〜40万円とされていますが、これは墓石の大きさ、基礎コンクリートの構造、現場までのアクセスの良し悪しなどによって大きく変わります。
特に重機の使用可否は費用に直結します。山間部や共同墓地で通路が狭い場合は重機を使えず、人力で運び出す必要があり、その分費用も増えます。また、基礎コンクリートが厚い場合には削岩機など専門の機材を使う必要があり、作業時間も長くなります。
新しい納骨先への納骨
改葬許可証を新しい納骨先に提出した上で納骨を行います。永代供養墓では合同での読経のみを行う施設が多く、個別の法要を希望する場合は事前の確認が欠かせません。一方、新しく個別墓を建立した場合には開眼供養(魂入れ)が必要で、寺院墓地に限らず希望すれば僧侶に依頼することができます。
納骨方法や供養スタイルは施設ごとに違いがあり、ガラス製やステンレス製の個別納骨棚など、従来の墓石とは異なるタイプの納骨施設も近年増えています。家族の希望に合ったスタイルを選ぶことで、納骨後の満足度も高くなります。開眼供養を行う場合には六曜(大安・仏滅など)を意識する家庭もあり、日取りの調整も早めに進めておくと当日の流れがスムーズです。
区画の返還手続き
最後に旧墓地へ区画返還を行います。返還に際しては、墓地使用許可証の返納や必要に応じて更地の写真の提出、管理料の精算などを行うことになります。寺院墓地の場合には、長年にわたり先祖を預かっていただいたことに対する感謝を伝えることで、円満な関係のまま手続きを終えることができます。
公営墓地や民営墓地の場合、返還された区画を次の利用者へ引き継ぐため、管理者が丁寧に現地を確認するケースもあります。そのため、更地の仕上がりが基準に満たない場合には石材店へ補修を求められることがあり、ここでも業者選びの重要さが表れます。
区画返還が完了すれば墓じまいの全工程が終了しますが、この段階でようやく「精神的な区切りがついた」と感じる人も多く、家族にとって大きな節目となる場面です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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