少子高齢化や都市化の進行により、「墓じまい」という言葉がすっかり一般的になりました。先祖代々のお墓を守り続けることが難しくなり、「次の世代に負担をかけたくない」「遠方で管理できない」といった理由から、墓じまいを選ぶ人が増えています。しかし、実際に手続きを進めてみると、思いのほか多くの問題が潜んでいることに気づかされます。「整理したはずが、かえって家族の間にしこりが残った」「費用が想定よりも高額になった」――そうした事例は全国で少なくありません。ここでは、墓じまいに関してよく見られる代表的な問題点を整理してみます。
費用が想定よりも高くなる
まず最も多いのが「費用トラブル」です。墓じまいには、墓石の撤去や処分、遺骨の取り出し、閉眼供養、改葬許可申請、新しい納骨先の費用など、複数の工程が重なります。そのため、見積もりの段階では30万円程度と思っていたものが、最終的に80万円、100万円と膨らんでしまうこともあります。特に注意が必要なのは、墓石撤去費用です。山間部にある墓地や通路が狭い場所では、重機が使えず人力での作業となるため、費用が跳ね上がります。また、改葬先として永代供養墓や納骨堂を選ぶ場合、その契約料や管理費も加わります。「墓じまい=安く済む」と思い込むのは危険です。業者によって見積もりの範囲も異なるため、必ず複数社から比較し、費用の内訳を明確にしておくことが重要です。
親族間の意見の不一致
次に多いのが「親族間のトラブル」です。お墓は一人のものではなく、家族・親族の思いが重なる場所です。「自分の代で整理したい」と思っても、他の家族から「勝手に決めないでほしい」「先祖を粗末に扱うのか」と反発を受けることがあります。特に地方では、長男が墓を継ぐという意識が根強く残っており、兄弟間での意見対立が起こりやすい傾向にあります。また、親戚の中には年配者や遠方の人も多く、事前に十分な話し合いがされないまま進めてしまうケースも少なくありません。一度手続きを進めてしまうと後戻りはできません。「なぜ墓じまいを考えるのか」「どんな形で供養を続けるのか」を明確にし、家族全員が納得したうえで進めることが何より大切です。
寺院や管理者との関係悪化
墓じまいを行うには、墓地の管理者――多くの場合はお寺――との調整が欠かせません。しかし、離檀(お寺の檀家をやめること)を申し出た際に、トラブルが起こることがあります。「離檀料をいくら支払うべきか」という問題が代表的です。法律で金額が決まっているわけではないため、地域や寺院によって幅があります。中には高額な費用を請求される例もあり、相談者が困惑することも少なくありません。また、閉眼供養(魂抜き)の方法や日程の調整、改葬許可証の発行など、寺院側の協力が必要な場面が多いため、関係が悪化すると手続き全体が止まってしまうこともあります。感情的にならず、誠意をもって説明し、丁寧に進めることが大切です。
改葬手続きの煩雑さ
墓じまいには「改葬許可申請」という法的な手続きが必要です。これは、遺骨を現在の墓地から新しい納骨先へ移す際に、自治体から許可を得るためのものです。しかし、各自治体によって申請方法や必要書類が異なり、手続きをスムーズに進めるのは簡単ではありません。書類の記載ミスや印鑑の不備で差し戻されることもあり、特に複数の遺骨を移動する場合は、申請書を一体ずつ作成する必要があるなど、非常に手間がかかります。また、改葬先となる永代供養墓や納骨堂側の「受入証明書」が必要になるため、双方の管理者と調整しながら進めなければなりません。こうした事務的な部分を誤ると、遺骨の移動ができず、予定していた日程がずれ込むこともあります。行政書士などの専門家に相談すれば、必要書類の整備や手続きの流れをサポートしてもらうことができ、無駄な時間や手間を省けます。
供養の継続に対する不安
墓じまいのもう一つの大きな問題は、「このあとどう供養するか」という点です。お墓をなくしても、先祖を大切に思う気持ちが消えるわけではありません。しかし、永代供養墓や納骨堂を選んだものの、後から「誰が参るのか」「何年後にどうなるのか」が分からず、不安を抱く人もいます。寺院によっては、契約期間が過ぎると合祀(他の遺骨と一緒に埋葬)される場合があります。それを知らずに契約し、後から「こんなはずではなかった」と感じることもあります。墓じまいは“終わり”ではなく“新しい供養の始まり”です。永代供養墓を選ぶ場合でも、供養の方針や期間、納骨後の管理についてきちんと確認し、家族全員で共有しておくことが欠かせません。
情報不足と悪質業者の存在
墓じまいの需要が増えたことで、残念ながら悪質な業者も増えています。「格安」「最短即日」などの宣伝文句をうのみにして依頼した結果、見積もりにない追加費用を請求されたり、工事がずさんだったという事例もあります。墓石の撤去や搬出には、専門的な知識と許可が必要です。無許可業者に依頼すると、法律上のトラブルに発展する可能性もあります。業者を選ぶ際は、必ず所在地・許可・施工実績を確認し、書面での見積もりを取るようにしましょう。また、寺院や霊園の管理者に紹介してもらう、または行政書士を通じて信頼できる石材店を選ぶと安心です。
「思い出の場所」を失う心理的な負担
最後に忘れてはならないのが、心理的な影響です。お墓は単なる石ではなく、家族の記憶や感謝の象徴でもあります。墓じまいを終えたあとに「寂しい」「申し訳ない」と感じる人は少なくありません。特に、長年通ってきた墓地を訪れられなくなることに、喪失感を覚える人も多いです。新しい供養の形に移行する際は、心の整理をつけるための儀式(閉眼供養など)をきちんと行うことが大切です。
後悔しないためにできること
墓じまいは、手続きや工事だけでなく、家族の心や供養の形を整える「人生の節目」です。焦って決めるのではなく、費用・手続き・供養・家族の意向を一つずつ確認しながら進めることが後悔を防ぐ第一歩です。専門家の助言を受けることで、複雑な改葬手続きや寺院との交渉もスムーズに進めることができます。そして、信頼できる業者や行政書士に相談し、見積もりを明確にすることが、最も確実な安心につながります。墓じまいは「家族の記憶を整理する」大切な行いです。問題点を理解したうえで、丁寧に、そして心を込めて進めていくことが何より大切です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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