墓じまいは宗派でどう変わる?儀式の違いと寺院ごとの注意点をわかりやすく解説

宗派によって変わるのは「手続き」ではなく「考え方」

墓じまいを検討する際、多くの方が気にされるのが「宗派によってやり方が変わるのか」という点です。結論として、改葬許可の取得や遺骨の取り出し、新しい納骨先の確保といった行政手続きは宗派にかかわらず全国共通で、書類や進め方が大きく変わることはありません。

しかし、お墓の意味づけや儀式に対する考え方には宗派ごとに特徴があり、実際の進め方に影響を与える場面があります。とくに、閉眼供養の扱い方、遺骨への向き合い方、新しい納骨先の選択基準といった点では、宗派によって重視されるポイントが異なります。

同じ宗派でも寺院ごとに方針が異なることも珍しくなく、現場では「宗派名」よりも「寺院の考え方」が最重要になることが多いのが実務の実感です。

閉眼供養(魂抜き)の扱い ― 宗派と寺院による違い

閉眼供養(魂抜き)は、墓じまいを行う際に誤解が生じやすい部分です。一般には墓石を撤去する前に行う儀式とされていますが、その必要性や意味付けは宗派や寺院によって大きく異なります。

浄土真宗では「お墓に魂が宿る」という考え方を採らないため、閉眼供養そのものを行わない、あるいは読経のみ簡略に行う形が見られます。儀式を行わなくても教義上問題がないため、「閉眼供養は必要ありません」と案内されることもある宗派です。

一方で、他宗派の寺院では、閉眼供養を区切りの儀式として位置づけ、一定の手順を踏んで営むケースが多く見られます。ただし、どの程度の形式で行うか、立ち会いの必要性、費用の考え方などは、宗派だけでなく寺院ごとの判断に左右されます。

代表的に見られる違いは次のとおりです。

  • 閉眼供養を行うかどうか
  • 読経の長さや内容
  • 誰が立ち会うかの基準
  • 儀式にかかる費用の扱い方

遺骨の扱いと納骨先の選び方 ― 宗派差が反映される場面

墓じまいでは、移転先となる納骨先をどこにするかという問題が必ず発生します。この点でも、遺骨に対する考え方や供養の姿勢に宗派ごとの差があり、選ぶべき施設が変わる場合があります。ただし、最終的な判断は宗派より「施設・寺院の運営方針」によるところが大きくなります。

永代供養墓や納骨堂には、次のような違いがあります。

  • 宗派を問わず受け入れる施設
  • 特定の宗派の法名・戒名のみ刻める施設
  • 他宗派の戒名を刻めない墓誌の運用
  • 合祀や樹木葬の可否
  • 供養の形式に独自のルールがある施設

「宗派不問」と記されていても、実際には運営母体の宗派色が残っており、戒名の扱いや儀式の方法に制限があるケースもあります。遺骨に対する考え方にも違いがあるため、遺骨の扱いを柔軟に認める寺院もあれば、伝統的な様式に沿って供養を行う寺院もあります。

納骨先選びでは、費用や立地だけでなく、宗派・寺院それぞれの方針を丁寧に確認することが、後悔のない選択につながります。

寺院との向き合い方と離檀料 ― 最も差が出るのは「宗派」より「寺院」

墓じまいで最も相談が多いテーマが離檀料です。離檀料には宗派ごとの明確な基準はなく、「寺院の方針」「地域の慣習」「これまでのお付き合いの深さ」によって大きく異なります。

数万円で済むこともあれば、長年の供養や寺院の事情によってまとまった金額となる場合もあります。同じ宗派でも寺院によって対応がまったく異なるため、「宗派が違うから金額が高い・安い」という単純な線引きは成り立ちません。

離檀料は単なる費用ではなく、これまでの供養に対する感謝や、寺院との関係を穏やかに締めくくる意味も持っています。丁寧に話し合い、双方が納得できる形を探ることが、トラブルなく進めるうえで最も大切です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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