お墓を残すか閉じるか迷ったときの判断基準
近年、「墓じまい」という言葉が急速に広がり、もはや一時的な流行ではなく社会現象となりました。
しかし、いざ自分の家族のお墓を前にすると、「このまま残すべきか、それとも墓じまいをすべきか」と迷う方が多いのが現実です。
お墓は、家族の記憶と祈りを受け継ぐ大切な場所です。そこには、世代を超えた想いや感謝が刻まれています。だからこそ、「閉じる」という決断は簡単にはできません。
本記事では、墓じまいを検討する際に考えるべき視点と、残す・閉じる双方の選択肢を整理し、心と実務の両面から後悔のない判断を導くヒントをお伝えします。
墓じまいが増えている背景と件数の推移
墓じまいが増加している背景には、少子高齢化、都市部への人口集中、家族構成の変化など、社会全体の構造的な要因があります。地方にお墓を持つ家庭が多かった時代から、今は「お墓を守る人」が減少しています。
「自分の代で整理しておきたい」「子どもに負担をかけたくない」という理由で墓じまいを選ぶ人が増えているのです。
実際に、全国の改葬件数(=墓じまいに相当する手続き)は年々増加しています。
- 2000年度:約6万6千件
- 2010年度:約9万件
- 2020年度:約14万件
- 2023年度:約16万6千件
この20年間で約2.5倍に増加しており、墓じまいは今や「特別な選択」ではなく「多くの家庭が直面する現実的な選択肢」になっています。
一方で、「墓じまいは先祖を粗末にすることではないか」と心を痛める人も少なくありません。
しかし本来の墓じまいは、家族の心と暮らしを整え、次の世代に安心をつなぐ行為です。
お墓を残すメリットとリスク
お墓を残すことには、目に見えない大きな価値があります。お盆や命日など、家族が集まって手を合わせる場があることで、「つながり」を感じる機会が生まれます。お墓参りは、故人を思い出し、家族の歴史を確認する時間でもあります。
一方で、現実的な負担も避けられません。お墓を維持するには、管理費・掃除・修繕費などが継続的に発生します。お墓が遠方にある場合、年に数回しか行けず、次の世代に引き継ぐのが難しいという声も多く聞かれます。
さらに、将来お墓を守る人がいなくなった場合、「無縁墓」として撤去される可能性もあります。お墓を残す選択は、いま守るだけでなく、将来に責任を持つ選択でもあるのです。
墓じまいを選ぶメリットとリスク
墓じまいの最大のメリットは、次の世代への負担を減らせることです。お墓の管理という義務感から家族を解放し、心の負担を軽くできます。
また、墓じまい後は遺骨を永代供養や納骨堂、自宅供養などに移すことで、より柔軟な供養の形を選ぶことができます。現代の暮らしに合わせて、故人を身近に感じられる方法を取る人も増えています。
もちろん、墓じまいには費用や手続きが必要です。墓石の撤去・改葬許可の申請・遺骨の移送・新たな供養先の費用など、総額で数十万円かかることもあります。また、寺院との関係がある場合、離壇料の問題が発生することもあります。
それでも、多くの方が「自分の代で整理しておきたい」と考え、墓じまいを選んでいます。先送りにすればするほど、手続きは複雑になり、費用や心の負担も増えてしまうためです。
墓じまいは“片付け”ではなく、“次の世代への思いやり”としての前向きな選択です。
判断のための3つの視点
墓じまいをするか、お墓を残すかを決める際は、次の3つの視点を意識すると整理しやすくなります。
1つ目は、家族の意見を聞くこと。お墓は家族全員に関わるものです。特定の人だけが決めてしまうと、「相談してほしかった」と不満が残ることもあります。早い段階から家族全員で話し合い、それぞれの立場や思いを尊重することが大切です。
2つ目は、費用と将来の現実。墓じまいには一時的な費用がかかりますが、残す場合は長期的な管理費が発生します。どちらが家族にとって負担が少ないか、冷静に比較することが重要です。
3つ目は、供養の形への理解です。お墓という形にこだわらなくても、故人を思い続けることはできます。たとえば、永代供養や自宅供養、樹木葬など、供養の形は時代とともに多様化しています。どんな形であれ、「想いをつなぐ」ことこそ供養の本質です。
行政書士ができるサポート
墓じまいを決めた後には、行政的な手続きが複数発生します。改葬許可申請や埋葬証明書の取得、離壇手続き、遺骨の移送、業者への依頼――慣れない書類や関係先との調整に悩む方が多くいます。
行政書士は、こうした手続き全般をサポートできます。特に、改葬許可の申請は書類不備があるとやり直しになることが多く、専門家の助言が大きな助けになります。寺院との交渉や離壇料の文書対応も含め、第三者として冷静に整理できるのが行政書士の強みです。
「どこから始めればいいかわからない」「親族にどう話をすればいいのか」といった段階から相談することで、気持ちの整理と手続きの準備を同時に進めることができます。墓じまいは、家族だけで抱え込むよりも、専門家と一緒に考えることで後悔のない道を選びやすくなるのです。
迷うことは自然なこと──焦らず、心の整理から
墓じまいは、終わりではなく「次の供養の形を選ぶプロセス」です。どんな決断をしても、そこに故人への感謝や思いがあれば、それは尊い選択です。
迷うこと自体が悪いわけではありません。むしろ、迷うというのは、故人を大切に思っている証拠です。焦らず、家族で時間をかけて話し合うことが、最も穏やかで後悔の少ない進め方です。
お墓を残すのか、それとも墓じまいをするのか。どちらを選んでも、「思いを受け継ぐ心」があれば、供養は続いていきます。行政書士など専門家の力を借りながら、手続きと心の整理を一歩ずつ進めていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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